英語落語家の喜餅さんインタビュー「30才から英語をやりなおし英語落語家へ」
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こんにちは。英語学習コーチのタニケイです!
今年5月に神戸で天満先生の英語劇セミナーに参加したときに、一人ただ者ではない雰囲気をまとっていた参加者の男性がいました。その方とたまたま同じグループになり、一緒にドラマを演じたのですが、英語の話し方、表情、身振り手振り、どれをとってもやはり素人ではない!... それが、英語落語家の喜餅(きもち)さんとの出会いでした。
実は私、2年程前に英語学校のドラマクラスで、落語の「芝浜」を英語劇にして演じたことがあり、(詳しくはこちら)英語落語にはとても興味がありました。日本語の落語を観に行ったことは何度かありますが、落語家の方の、あのイマジネーションをかきたてる仕草、表情、声の使い分けなどは、本当にすごいな〜と思います。舞台上には座布団に座っている一人の人しかいないのに、まるで目の前で登場人物が何人もいるドラマが展開されているように感じるのです。そんな落語を「英語」でやっている喜餅さんには、さらに興味が湧き、ぜひ東京でも公演をされるときにはお知らせください!とお願いしていたのでした。
喜餅さんは普段は愛知県を中心に活動されていますが、今月8/23(土)の夜には東京でも公演をされます!
喜餅さんの「どまんなか寄席」第6回のご案内
日時:2014年8月23日(土) 18:00開場 18:30開演
会場:板橋区立グリーンホール(504号室)
チケット:1,500円
参加ご希望の方は、FBイベントページでチケット枚数をコメントするか、こちら(喜餅さん)へメールにてご連絡ください。
私ももちろん伺う予定です。チケットに限りがありますので、参加ご希望の方はお早めに!!
英語落語家 喜餅さんの「英語落語家への道」インタビュー
喜餅さん、実は英語落語家としての顔とは別に、堅いお仕事もされています(笑) 英語落語を始めたのはここ数年とのこと。なぜ、どんなきっかけで英語落語を始めたのでしょう...そんな疑問が浮かびますよね。そこで、喜餅さんの英語学習歴と、英語落語を始めたきっかけなどをインタビューさせていただきました!
ー 喜餅さん、よろしくお願いします!まず、英語落語を始めたきっかけを教えていただけますか?
はい。愛知で英語学習者の集まりが定期的にあるのですが、年に1回、それぞれが出し物を決めて発表する場があるんです。英語を使うものなら何でもよくて、紙芝居をしたり、日本の歌を英語にしたり、スピーチをしたり、色々なことをします。2010年の発表会の前に、カナダ人の桂三輝(かつらさんしゃいん)さんの英語落語のワークショップに出て、そこで三輝さんがやられた5分間の英語落語をコピーして、発表会で披露したんですが、それがものすごく受けて、楽しかったんですよね。
それで、東京で英語落語を教えてくれるCanary英語落語教室を友達に紹介してもらって、そこに毎月通い始めました。そこでは年に2回、各生徒が発表会に出て、英語落語を披露します。師匠から演目をもらって、それをそのままやる人もいれば、少しアレンジしてやる人もいます。全部で30人ほどの生徒がいて、発表会は1人ずつ演目を披露しますので、3日ほど続きます。その学校に2年半くらい通いました。Canaryの鹿鳴家英楽(かなりやえいらく)師匠の指導のおかげで、現在の私の原型ができあがりました。とても感謝しております。その後、その学校を卒業して、一人で英語落語家として活動を始めたのは昨年のことです。
ー そうなんですか!じゃあ英語落語を始められたのはここ数年なんですね。ちなみに「喜餅」さんというお名前はどうやって決めたんですか?
英語落語教室での亭号(ていごう)が 鹿鳴家(かなりや)なので、それとくっつけて 「鹿鳴家喜餅(かなりやきもち)」と名付けたのが 最初です。友達に名付け親になってもらいました(笑)
ー かなりやきもち...ああ!なるほど!そういうことですか〜(笑) では、英語落語を始めるまでは、英語学習はどんな形で続けられていたんですか?
実は私は30才から英語学習を再開しました。仕事で独立して3年経った頃で、30才になる前に新しいことを始めたいと思ったんです。昔から洋画を観たり、翻訳ものの小説を読んだりするのが好きでした。小説などはあとがきを読むと、やはり原作を読むことを勧めているものが多くて、やはり英語で読めるようになりたいな、と。
今回は「勉強」としてではなく、「言葉」としての英語に触れてみようと思いました。仕事柄、言葉の力や恐さなどを知っていたので。それから、元々、資格の勉強をしたり資格を取ることが大好きで、英語も資格試験を受け始めたら絶対にはまってしまうと思ったので、あえて英語の試験からは遠ざかって、受けないようにしました。
ー では、どんなふうに英語に触れていったんですか?
「英語を使うこと」を軸にしました。それには、洋書や洋画、洋楽など、好きなものを使いました。たとえば、カラオケの持ち歌の洋楽を増やす、チャットできる外国人の友達を増やす、英語ができる日本人についてまわる(笑)、などです。一人の時は、昔読んだ絵本の英語の原書を読んでみたり、映画も同じものを何回も観るのも好きだったので、何度も観たりしました。
ー 映画や洋楽はどんなものを選びましたか?
映画は、ホラー映画やサスペンス映画が中心です。日常会話は少なくて英語のインプットとしては効率が悪かったかもしれませんが、無理してやることではないので、好きなものから入るようにしました。洋楽は90年代のバラードっぽいラブソングなどです。最近の歌はラップが多くて歌いにくいので。
そうそう。日本人で、高校大学アメリカにいたという英語ができる人に出会って、その人を師匠と仰いで、一緒にカラオケに行って、持ち歌を披露させてもらいました。何時間か歌った後、その師匠に「ちょっとアルファベットを発音してみて」と言われ、発音してみると、「日本人のカタカナ発音になっているからアルファベットの発音からやり直しなさい」と言われました。その後は、自分で洋楽を歌って録音して聞くなど、試行錯誤しましたね〜。
ー 英語の試験というのは今も受けていないんですか?
実は、英語を再開して3年くらいたったときに、英語の試験を受けてみようかな、という気になりました。でも英語の試験対策勉強をするのは嫌だったので、対策をせずにTOEICを受けたら、初回が635点でした。その後半年ごとくらいにTOEICを受けて、2〜3年で900点台に乗りました。昨年英検1級も取りました。
ー 英検1級はすごいですね!エッセイなど練習しないといけませんし、語彙もかなり難しいと聞きますよね。
エッセイについては、Skypeで月1回数人のメンバーで、テーマを決めて英語のエッセイを書いたり、4コママンガを作って説明してみたりして、それについてディスカッションやフィードバックをする、ということを続けていて、それが自然と練習になっていました。何かの試験対策とかではなく、好きなトピックについて、食べ物の話から政治の話まで題材にします。7人くらいでやっていて、今はもう5年目ですね。それだけで30個ほどエッセイを書いています。
あとは筆写をよくしています。TOEICのPart7のメールや告知文などを筆写したり。自分が落語の公演のメールを送るときにも参考にしました。TOEIC対策は、たぶん問題を解くよりも筆写をすることの方が多いです。
ー 筆写が良いというのは良く聞きますね。他にも何か読んだりもしていますか?
はい。最初は簡単な絵本から始めましたが、今は段々レベルを上げていって、普通の洋書を読んでいます。あと、好き嫌いの偏りが大きいので、ネットでニュースを読むとどうしても読む記事が偏ってしまいます。なので、英字新聞(The Japan Times on Sunday)を紙媒体で毎週購読して、「必ず全記事を読む」ということを自分に課しています。
ー すごいですね!全部の記事読めていますか?
はい。毎日数記事ずつ読んでいます。ニュースを読むと新しい知らない言葉がたくさん出てくるんですが、ニュースは単発で終わるわけではなくて、その後も続報を読む機会があるため、キーワードになる単語は何回も目にします。それで頭に定着しやすいんですね。それに、単語が分からなくても読めるような読み方をしようと思っています。移動中などのスキマ時間に読んでいます。
ー お仕事をしながら色々な英語学習をされているので、相当な時間を費やしているのでは?と思いますが...
そうですね。「社交的な引きこもり」なんです、私(笑) 一人で英語落語の練習を家で何時間もしたりしていますが、全然苦になりません。サボるときも、まずは英語のゲームをしたり、英語を使ってサボるようにしています。本当に何もしたくないときには英語に触れないこともありますが。
ー では、英語落語のお話に戻りますが、観客としては、英語がどのくらい分かれば楽しめますか?
実績としては、英語が全く分からない方でも楽しんでいただけました。一応、リーフレットに噺のあらすじを日英双方で書いてありますので、どんな話かは分かるようになっています。私の英語落語では、日本語は基本的に使いません。なので、ちょっと集中力はいるかもしれません。でも、英語力だけで決まるものではなくて、想像力がある方のほうが楽しめるだろうな〜と思います。あとは、英語の言葉遊びだったり、他の作品へのオマージュみたいなものも入れたいと思っているので、その部分は分かる方と分からない方がいらっしゃるかもしれません。
ー じゃあ、そういうものが分かったら嬉しい!くらいのつもりで頑張って聞いてみますね^^ 喜餅さんは英語落語だけではなくて、スピーチコンテストにも出られているとお聞きしましたが。
そうなんです。最近は、自分の今の英語力の中だけで回してしまわないように、無理矢理その枠を広げていきたい、ということで、スピーチコンテストや試験というのを意欲的に受けるようにしています。先日も愛知のとある専門学校主催のスピーチコンテストで4位入賞しました。今も、次のスピーチコンテストに向けて内容を考えているところです。
ー 社会人が出られるスピーチコンテストって、少ないですよね?もっとあってもいいのに、と思いますが。
そうですね。やはり学生向けが多いですね。昨年あるスピーチコンテストで “more specific” という指摘をもらったことがありました。そのときには分からず、ずっと考えてたのですが、最近ようやく、以前よりは『あぁ、こういうことなのかな』と感じるようになりました。具体的に自分が指導するとなると難しいのですが。スピーチコンテストに出ていなかったら、そうしたことに気づくことができなかった、もしくはもっと遅かっただろう、と思います。
それが分かるようになって、また落語の台詞回しがよりspecificになって、同じ演目でもどんどん育っていきます。覚えたばかりの落語って、ちょっと荒くて、それがだんだん変わっていくんです。英語力の成長や、こなれてくることによって。
ー なるほど〜。そうやってつながっていくんですね。面白い!英語学習者の方に、英語落語はおすすめですか?
英語落語をやったらTOEICが何点伸びる、なんていうことはないですが、ここ数年、英語学習は勉強ではなくてナマモノと考える人や、試験でスコアをとるだけではなくて実際に英語を使いたいという人が増えてきていますよね。その練習ツールとしては、英語落語は一人でできるので、楽にできますね。座布団さえあれば!
ただ、必ずしも落語じゃなくてもいいんです。立ってやるならレシテーション、座ってやるなら英語落語、ということなのかな?と思います。つまり、英語落語は一つの表現の手段として存在しているものだと思います。落語でなくても、映画のワンシーンをやってもいいし、TOEICやTOEFLで使われている会話を使ってもいいし。
ー そうですね!私もレシテーションと英語落語は似てるのかな?と思いました。
あと、一つレシテーションなどを練習している方に参考になるかな、と思うのは、できる限り練習のときに、本番をイメージして練習するということです。しかも、ちょっと観客席の空気が凍っているような、アウェイな過酷な状態をイメージして練習しておくと、本番ではそれより温かく感じて、やりやすいんです。
ー なるほど〜!本番のイメージはしながら練習していましたが、いつも温かい観客の目をイメージしちゃってました!やってみよう〜。
あとは、人の目があると全然違うので、英語がわからない人でもいいから観客になってもらって、その人の前で練習するのがおすすめです。それだけで、本番に近い形になります。
ー 喜餅さんにとって、英語落語は英語力とどういう関係があるんですか?
私の場合は、英語学習から始まった英語落語ですので、英語力が上がれば自分の落語はもっと楽しくなる、「英語力」と「落語力」の両輪で考えています。私は顔芸や空気だけで笑わせるタイプではないので、だからこそ、たとえばウィットに富んだ言い回しができるようになりたい、そのために英語力を上げていきたいというのがあります。
ー そういった英語力を上げるためのインプットとしては、どんなことをしていますか?
インプットにはやっぱり音読ですね。発声をしながら染み込ませていきます。あと、私は、英語に触れる際、単語を忘れることを許しているんです。それよりも、辞書をひくことを億劫に感じないように、忘れることを許す代わりに、辞書を何度もひくことを課しています。そして、辞書は英英辞典を使っています。アプリはLongman、家では紙媒体でOxfordを使っています。何か単語が分からなくても、それを説明できればいいんですよね。最初の頃は英英辞典は苦痛でしかなかったんですけど、先ほどの学習仲間との間で、英語で何かの単語を説明して当てさせるゲームを何年か前に始めました。当たったら、当てさせた人が2ポイント、当てた人が1ポイントもらえる、というゲームです。それから、英英辞典が面白くなりました。
ー そのゲーム、楽しそうですね!
あと、インプットについては、通訳などでない限りは、日本語を介さずに、映像でとらえて英語にする方が早いんじゃないかなと思います。たとえば、"snake"と聞いたら、「蛇」という言葉を思い出す前に、にょろにょろした動物の絵を思い浮かべる。洋書などが良いのは、文章を読みながら、想像してイメージを作りやすいからなのかな?と思います。
ー それは私も思います!インプットはなかなか時間がかかりますが、新しい単語に出会ったらできるだけイメージで覚えるようにしています。自分でイメージできないときには、Googleの画像検索を使って、しっくりくる画像と英語の単語を結びつけて覚えます。では、最後にまた落語のお話に戻りますが、8/23の東京での「どまんなか寄席」では、どんな演目をされる予定ですか?
寿限無(Jugem)、駅前留学(No English, No Life)、芝浜(Shiba Beach)の3本をやります!
ー わあ〜!「芝浜」も!その3つはどんなお話なんでしょうか?
「寿限無」は落語の定番ですが、場面設定を現代版に変えています。「駅前留学」はオリジナルです。「芝浜」はご存知の通りの人情話ですね。
ー あとは当日のお楽しみですね!8/23、本当に楽しみにしてます!!今日はありがとうございました!!