タニケイ英語学習放浪記vol.8 〜レシテーションコンテストから得たもの〜
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最終更新日:2013/12/31
こんにちは。英語学習コーチのタニケイです!
先日、タニケイ英語学習放浪記vol.7 〜初めてのステージで目覚めたもの〜で、英語学校FORWARDに入学して、発表会でステージに立って英語劇の中で演劇をしたことで、自分の中で大きな変化が起きた、ということを書きました。
(タニケイ英語学習放浪記vol.1 〜英語との出会い〜はこちら)
その変化は、始まりに過ぎませんでした。
続いてもう一つ、私を変えた大きなできごとがあったのです。それが、レシテーション(朗唱)との出会いでした。
FORWARDでは、有名なスピーチ、世界を変えたような偉大なスピーチをまるごと覚えて、それをまるで自分のスピーチかのように自分のものにして暗唱する、ということが課題になっています。代表の石渡誠先生は、これをただの暗記の暗唱と区別するために、「朗唱」という言葉で呼ばれています。
私が入学したときには、オバマのスピーチがレシテーションの課題でしたが、その後、スティーブ・ジョブズの2005年のスタンフォード大学卒業式でのスピーチが課題になりました。
あの、"Stay hungry, stay foolish." のフレーズで有名なスピーチです。
ジョブズの”Stay Hungry, Stay Foolish”スピーチのその後でも書きましたが、私はソニーに勤めていながら、アップル、というかジョブズが好きで、このスピーチのことも知っていましたので、それがレシテーションの課題になって、かなりやる気になりました。
FORWARDでは、年2回の発表会と、その間のミニプレゼンテーションという中間発表会のタイミングで、合計年4回レシテーション大会が開催されます。そして、毎回2〜3分の範囲がコンテストの課題となります。
スタンフォード大学の卒業式のスピーチでは、ジョブズが自分自身の経験から、以下の3つのトピックを、卒業生に向けて語っています。
1. Connecting the dots
2. Love and loss
3. Death
最初にレシテーションコンテストの範囲になったのは、1.Connecting the dots の中の以下のパートでした。
None of this had even a hope of any practical application in my life. But ten years later, when we were designing the first Macintosh computer, it all came back to me. And we designed it all into the Mac. It was the first computer with beautiful typography. If I had never dropped in on that single course in college, the Mac would have never had multiple typefaces or proportionally-spaced fonts. And since Windows just copied the Mac, it's likely that no personal computer would have them. If I had never dropped out, I would have never dropped in on that calligraphy class, and personal computers might not have the wonderful typography that they do.Of course, it was impossible to connect the dots looking forward when I was in college but it was very, very clear looking backwards ten years later.
Again, you can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So, you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something: your gut, destiny, life, karma, whatever because believing that the dots will connect down the road will give you the confidence to follow your heart, even when it leads you off the well-worn path. And that will make all the difference.
1st storyは、普通の労働階級の両親に高い学費を払ってもらいながらも、大学で自分のやりたいことが見つかると思えなかったジョブズが、大学を中退して好きな授業にだけ出ていたときに、たまたまカリグラフィーの授業に出て、それに魅了され、後にアップルを始めてからそれを思い起こして、Macに様々な美しい書体を入れたというエピソードを元に、後から振り返れば「点と点はつながる」ということ、そして、「いつか点と点はつながるのだ」と信じて自分の心に従って生きることで、人生を変えていくことができる、というメッセージを伝えています。
私は、このスピーチが好きだったからということもありますが、スピーチの内容を深く理解して、感情移入して話したかったので、コンテスト直前になっても、コンテスト範囲だけでなく、冒頭の部分からスピーチを練習していました。
そして、自分が知らなかったジョブズの一面を知りたい、と思い、ジョブズとビル・ゲイツの戦いを描いた映画、「バトル・オブ・シリコンバレー」を借りてきて観たり、ジョブズの通ったReed大学のサイトを読んだり、ジョブズの魅了されたカリグラフィーというのがどんなものなのかを調べたりしました。
この中で特に好きだったのは、"follow your heart" という言葉でした。
他人から良いと思われる人生ではなく、自分自身が「こう生きたい」と思う人生を生きる。本当はそういう生き方がしたかったのですが、そうではない人生を選んでいるな〜と、当時なんとなく感じていたのだと思います。そんな自分に "follow your heart" という言葉は、口に出すたびに刺さりました。私は "follow my heart" できているの?と。
実は先月、FORWARDの発表会があり、そこで、私の所属するドラマクラスでは、マンマ・ミーアのミュージカルを演じました。でもオリジナルにはない役が一人。それがスティーブ・ジョブズでした。なぜかスティーブ・ジョブズがマンマ・ミーアの中に登場し、主人公やその娘に声をかけるのです。そのジョブズの役を私が男装して演じました。
そして、そのセリフの中に、"Follow your heart" という言葉があったのです!
これも、点と点がつながる、ということなのかな〜と感慨深かったです...(ちょっと違うかな?)
暗唱と朗唱の本当の違いに気づいたのは、次の、2012年秋のコンテストのときでした。
次のコンテストの範囲は、second story: love and loss のうちの、以下の部分でした。
I was a very public failure and I even thought about running away from the Valley. But something slowly began to dawn on me: I still loved what I did. The turn of events at Apple had not changed that one bit. I had been rejected but I was still in love, and so I decided to start over.
I didn’t see it then but it turned out that getting fired from Apple was the best thing that could have ever happened to me. The heaviness of being successful was replaced by the lightness of being a beginner again, less sure about everything. It freed me to enter one of the most creative periods of my life.
During the next five years, I started a company named NeXT, another company named Pixar, and fell in love with an amazing woman who would become my wife. Pixar went on to create the world’s first computer – animated feature film “Toy Story” and is now the most successful animation studio in the world. In a remarkable turn of events, Apple bought NeXT and I returned to Apple, and the technology we developed at NeXT is at the heart of Apple’s current renaissance. And Laurene and I have a wonderful family together.
I’m pretty sure none of this would have happened if I hadn’t been fired from Apple. It was awful – tasting medicine but I guess the patient needed it. Sometimes life is gonna hit you in the head with a brick. Don’t lose faith. I’m convinced that the only thing that kept me going was that I loved what I did. You’ve got to find what you love. And that is as true for work as it is for your lovers. Your work is gonna fill a large part of your life and the only way to be truly satisfied is to do what you believe is great work. And the only way to do great work is to love what you do. If you haven’t found it yet, keep looking and don’t settle. As with all matters of the heart, you’ll know when you find it and like any great relationship, it just gets better and better as the years roll on. So, keep looking. Don’t settle.
このときは、決勝に上がりました。そして、初の決勝で、優勝したのです。
そのときの動画がこちらです。
発音やfluencyなどは、まだまだなのですが、たぶん優勝者として選んでいただいたのは、私がスピーチに込めた気持ちが伝わったのかな〜と思います。
このとき、こんなにスピーチに気持ちを込められたのは、実は自分自身が、keep looking, don't settle. と自分に言いたかった、ということと、FORWARDのクラスメイトの中に、そう声をかけてあげたい友達がいたからなのです。
たぶん、予選でも決勝でも、ジョブズのスピーチだということは全く忘れて、自分のスピーチとして話していました。
もちろん、練習のときにはジョブズのスピーチを何度も聞いて、リピーティングしたり、シャドーイングしたりしながら、暗唱していきました。暗唱ができるようになったら、その後は、そのスピーチの意味を考えながら練習しました。
最初は「ジョブズはこのとき何を考えながら話していたのだろう」と思いつつ暗唱していましたが、いつの間にか、私はこのスピーチを誰にどういう風に伝えたいのだろう、と考えるようになりました。私がこのスピーチをすることで、聞いてくれている人にメッセージを伝えたい、何かを受け取って欲しい、と思うようになりました。
このとき私が伝えたかったメッセージは、"keep looking, don't settle."
もしも今、自分がやりたいことが見つかっていないなら、妥協しないで探し続けよう。
それは、友達へのメッセージでもあり、私自身へのメッセージでもありました。
このときに気づいたことは、レシテーション(朗唱)は「言葉を自分のものにする練習」なのだ、ということです。
スピーチをただ暗記して暗唱するだけではなくて、自分の気持ちを乗せて話せるようになると、その言葉はもう母国語と同じように、自分のものになります。
私はこのときから、レシテーションの素晴らしさに気づいて、レシテーションが大好きになりました。
自分がレシテーションをするときには、聞いてくれる人がいることが嬉しいです。そして、人のレシテーションを聞くのも大好きです。同じスピーチなのに、本当に人それぞれ個性が出ますし、レシテーションをしている人を見ていると、その人がそこまでがんばってきた道のりが、見える気がするのです。
きっと、お風呂の中とか、道を歩きながらとか、料理をしながらとか、子供が寝た後とか、仕事の合間をぬってとか、とても忙しい中でみんなレシテーションを練習しているんだろうな〜と思うと、がんばれー!!と思うのです。
ジョブズのスピーチはもう終わってしまい、今の課題スピーチは、オバマの2004年の民主党党大会の基調演説になっていますが、オバマのスピーチには、ジョブズのスピーチとはまた全然違った魅力があります。
まず、レトリックの使い方がかっこいい!言葉のリズム、語感にしびれます!そして、私もアメリカ人になりたかった、と思うような、国を誇らしく思わせてくれるスピーチ。
もし、この場にいて直接演説を聞いていたら、興奮のあまり倒れていたかも...と思うほどです。
学校の友人たちと一緒にレシテーションの練習会もしていますが、一人一人のレシテーションを聞いて、フィードバックをし合って、それで皆のレシテーションがどんどん良くなっていくのが、とても嬉しくて楽しみです。
次のレシテーション大会の予選は1月11日から開始です。きっとまた新しいドラマが生まれるんだろうと思います。私も残り1ヶ月、がんばります!
次回、「タニケイ英語学習放浪記vol.8 〜レシテーションコンテストから得たもの〜」はこちらからどうぞ!!
オバマスピーチのレシテーションに興味がある方は、石渡誠先生のこちらの電子書籍で、ぜひ一緒に練習しましょう!
Part1からPart5に分けて出版される予定で、現在Part2まで出ています。
Enjoy Learning English!!
タニケイ