5年前は全く英語が話せなかった寺田さんが国際会議で英語プレゼンを行うようになるまで
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こんにちは。英語学習コーチのタニケイです!
今回は、PloneというCMS(Contents Management System)を利用したサイト構築・運用・コンサルティングなどをされているCMSコミュニケーションズの社長の寺田学さんに英語学習のお話を伺いました。
寺田さんは2014/6/4の会社のブログで「英語でプレゼン」という記事を書かれていました。その中には衝撃の内容が!
以下、寺田さんのそのブログを全文紹介させていただきます。
5年以上前から私を知っている人ならご存知だと思いますが、私は英語が全く話せませんでした。もちろん今でも不自由を感じ、英語でコミュニケーションを取るのは一苦労です。
そんな私ですが、海外のカンファレンスに行って様々なものを吸収して来ました。これは素直に面白いことです。さらに友人が出来るとなおさら面白さが増えてきます。
そんな中で、最近は英語のプレゼンに挑戦するようになっています。日本語でのプレゼンも同様だと思いますが、「場数は重要!!」ということで、機会があればセッションを持つように心がけています。
今年もPloneカンファレンス 2014がイギリスで行われる予定ですので、現地で発表ができたらと思っています。さらに友達も増えてきているので、いろいろな話が聞けるように英語力を付けて行きたいと思います。<過去の英語プレゼン>
最後に、私が今までに行った英語のプレゼン経験をまとめてみます。・日本でのPlone事例 / LT(5分) / PloneConf 2010 イギリス ・・初の記念LT
・Ploneプロダクトの紹介 / LT(5分) / PyCon JP 2012 日本 ・・日本語が交じる内容となった
・PyCon JPの紹介とFuzzy Search / LT(5分) / PloneConf 2012 オランダ ・・ある程度うまく行ったが、質問には答えられなかった
・Fuzzy Searchの詳細説明 / 25分 / PloneConf 2013 ブラジル ・・・間延びしてうまく出来なかった
・PyCon APAC 2013 in Japan の報告 / LT(5分) / python brasil [9] (PloneConf 2013と共同開催) ・・・うまく出来たと思う
・PyCon APAC パネルディスカッション / 45分 / PyCon APAC 2013 日本・・最初のプレゼンは問題なかったが、議論には入れず(通訳を経由して聞いたり話したり)
・Open edXの紹介 / LT(5分) / PyCon APAC 2014 台北 ・・・ 少し早口だったが内容は伝わったと思う
・PyCon APAC パネルディスカッション / 90分 / PyCon APAC 2014 台北 ・・・何回か口を開くのみ。一生懸命まわりの言っている事を理解していたが、すぐに別の話題になり大変だった
この寺田さんのブログを読んで私は思いました。「英語ができるようになったらスピーチをしたい、プレゼンをしたい、英語を使って仕事をしたい」と考えている人は多いと思いますが、先に使う機会を作ってしまうことで英語を伸ばすほうが、結果的に早く伸びるのではないかな、と。
そして、寺田さんに詳しくお話を伺う機会をいただきました。ぜひ皆さんも、勇気ある寺田さんの英語プレゼン体験を参考にしてくださいね!
5年前は全く英語が話せなかった寺田さんが国際会議で英語プレゼンを行うようになるまで
― 寺田さん、よろしくお願いいたします。寺田さんのブログには「5年以上前から私を知っている人ならご存知だと思いますが、私は全く英語が話せませんでした」とありましたが、本当に全く話せなかったのですか?
はい。本当に話せませんでした。2005年にこの会社を始めたのですが、Plone関係のことをやっていると周りは英語ができる人が多いんです。海外の情報を入手できたり、翻訳ができたり。そういう人たちをすごいなあと思いながらも自分は英語をやれずにいて。
2008年にワシントンのカンファレンスに行った時には自己紹介すらできず、同行者に通訳をしてもらいました。一人で食事しようとしたときも、途中で諦めようと思ったくらい英語ができませんでした。一度、ハンバーガーショップでハンバーガーセットとナゲットを頼んだら、ナゲットセットが出てきてハンバーガーが食べられなかったなんていう悲しいできこともありました(笑)
― あら〜!それはショックですね〜。学生時代は英語はどうでしたか?
全然やりたくなかったし、やらなかったですね。英語は嫌いでした。社会人になってからは、やらなきゃいけないなと思った時期は何度もあって。一時期はラジオ講座をやってみたりもしました。でも続けるのは難しかったですね〜。そこで2008年から英語の先生に会社に来てもらって、社員皆で授業を受けるということを始めました。
― そのレッスンはどれくらいの時間ですか?
週に1回、1時間半から2時間くらいです。「忙しくて普通の英会話スクールのレッスンだと通わなくなるだろう」と人から言われて、それなら会社に来てもらった方がいいなと。今でも、基本的に社員皆でレッスンを受けています。社員は6人いるのですが、皆レベルはそれほど高くないので「皆で頑張っていこう!」とモチベーションをあげています(笑)
― どんな授業をされているのですか?会話中心でしょうか?
3パターンくらいのテキストを使ったり、文法の確認をしたり、よく使う言い回しを使って自分のことを話してみたりしています。あとはひとつの単語やキーワードに沿って会話をしてみたり、読み物を読んだり、色々です。レベルの調整はこちらからお願いすることもあります。レッスン自体も良いですが、レッスンのことについて英語の先生と相談するために英語を話す機会が増えたのも良いことですね。言いたいことがあるのに言えないもどかしさも実感しますし。
― そうですよね。そのもどかしい思いがどれだけできるかというのも英語を身に着けていく上でポイントになってきますし、それには実際の会話が一番ですよね。ちなみに「英語をやるぞ!」と思ったきっかけみたいなものは何かありますか?それとも「プレゼンをやってみよう」というのが先だったのでしょうか?
やはり、2008年のワシントンのカンファレンスがすごく刺激的だったので、もっと聞き取れるようになりたいという気持ちは生まれました。また、一人で海外旅行ができるようになりたいとも思いました。
― そのワシントンのカンファレンスが大きなきっかけになったんですね。寺田さんがご自身で英語プレゼンを始められたのはいつごろからですか?
2010年の10月、イギリスのブリストルでのPlone Conferenceです。200人以上の前でのプレゼンでした。それは3分もないくらいのプレゼンで、Q&Aもありませんでした。
― 初めての英語プレゼンが200人以上の前とは、大舞台ですね!その英語プレゼンはどうでしたか?
とにかく喉が渇いて、終わったらすぐ水を飲みに行きました(笑)司会者が顔見知りだったので、セッティングに戸惑っていたらトークで場を温めてくれたりして、やりやすかったです。
― プレゼンの内容は事前にしっかり準備されたのですか?
多少の準備はしていましたが、実は前日くらいに内容を決めました。練習もそんなにしなかったですね。日本語でのLT(ライトニングトーク)*は何度も経験があったので内容が決まっていればそんなに問題はなかったですね。「とりあえずやってみなきゃ始まらない」という気持ちでした。LTをすると、その後に声をかけてくれる人もいて、知り合いも増えました。
*LT(ライトニングトーク)とは、技術系イベントで行われる5分程度の短いセッションです。複数のLTをリレーして行われます。
― 当時、日本からのカンファレンス参加者というのは珍しかったのでしょうか?
そうですね。この時アジアから来ていたのは3,4人で、あとはアメリカやヨーロッパからの人が中心でした。カンファレンスでPloneのコードを書いている各国の人たちとのつながりがたくさんできたことは、その後も仕事においてとても役立ちました。
― カンファレンスでは聞く側に回ることも多いですよね?聞く方はいかがでしたか?
聞くのはスライドがメインでしたのである程度の理解ができました。ただ早口の人のプレゼンは、もう聞き取ることを諦めていました(笑)
― その後、日本や海外でこのような英語プレゼンの機会は増えていったのですか?
そうですね。2012年には日本でPloneのプロダクトを海外の方々に紹介する機会がありました。この頃からは、日本でのカンファレンスであっても、英語のプレゼンも増やそうということで、英語プレゼンの数を増やしたり、イベント代表挨拶なども英語でしたりしました。LTの枠が埋まらない時には、私が本番ぶっつけの英語LTに挑戦したりもしました(笑)
― そのようなイベントで英語の枠を増やしたことでなにか雰囲気は変わりましたか?
やってみると思ったより英語で話したい日本人も多くて、少しずつみんなの意識が変わってきた気がします。2013年も「LTはなるべく英語で」ということにしたら、かなりの人が英語で話されました。英語で発表しようとしたり、外国人とコミュニケーションをとろうとしたりする人は増えましたね。
― 寺田さんご自身の英語でのプレゼン力は、最初の頃と比べていかがですか?
去年の2013年のブラジルのLTは良かったかなと思います。慣れてきて緊張しなくなったのか、前よりも落ち着いて話せるようになりました。
― LTは基本的にQ&Aはないのですか?
一度ありました。その時は緊張して答えられませんでした(笑)
― パネルディスカッションなどもされたことがあるそうですが。
はい。日本でのPyCon Apacという会議でのパネルディスカッションは、通訳を経由して聞いたり話したりしていましたが、今年の台湾でのパネルディスカッションの時は1時間半くらいで通訳なしで行いました。これは、人数が多かったのもあって大変でした。シンガポールや台湾の方々は英語が達者なのでどんどん議論が進んでしまって、ついていくのがやっとでしたね。発言は、最初の一言とか、質問に対する応答はできましたけど、議論にはなかなか入り込めませんでした。
― 英語力自体よりも、議論に入り込むマインドやその隙を見つける難しさがパネルディスカッションにはありますよね。
そうなんです。「この話題なら話せるな」と考えているうちに別の話題に移ってしまっている、ということはよくありましたね。
― では、今後の目標みたいなものはなにかありますか?
発表などは今後も継続していきたいと思うのですが、それ以外にランチタイムなどのコミュニケーションをもっとスムーズにしたいです。あらかじめネタを作って話すのはできると思うのですが、会話の瞬発力みたいなものはまだついていないと思うのです。話に入り込むことはできるようになりましたが、なかなか会話を続けるのが難しいです。
― 今は週に1回のネイティブの先生とのレッスンの他には何か英語学習はされていますか?
一時期はNHKのラジオやiPhoneのポッドキャストを聞いたりしていましたが、あまり続きませんでした。その他のことは今はやってないです。
― 英語学習はおもしろさがないと続かないですよね。あとはわかりやすい目標があれば変わってくると思うのですけれど、ラジオとかポッドキャストとかは「これが何につながっていくのか」ということが分かりづらいかもしれませんね。
やっぱり一番良いのは海外の方と直接会話をすることですよね。頑張ってでも話してみること。それから今は仕事で英語しか話せないお客さんがいるので、その方とは英語でチャットをしています。ちょっと辛いですけど(笑)
― 会話の中で「こういうことを言いたいけれど、なんて言うんだろう」と分からなくなることはありますか?
ありますね。特にスカイプのメッセージは瞬発的なものじゃないですか。「なかなかうまく書けないな」と思うことも「辛いな」と思うこともありますが、それでも「なにか言おう」とは心がけています。それでなんとかやれていると思います。向こうの方が合わせてくれているというのもありますが(笑)
あと、英語を話すと思うことは、皆さん、優しいんです。最初は英語を話すことが恐かったんです。勘違いされたら困るという気持ちもあって。でも、私の英語がつたなくても、カンファレンスで話すような人たちは、分かろうとしてくれます。だから、もしかすると文法間違いをしたり失礼な言い回しになってしまったりしているかもしれないけれど、「そんなことよりも単語でもいいからとにかく言いたいことを伝えよう」と思うようになりました。
― 英語が話せるようになると、どんなメリットがありますか?特にIT業界では、英語の重要性は高いのではないかと思いますが。
そうですね。それなのに、昔は英語や外国の方との会話から逃げまわっていましたね(笑)たしかに英語のドキュメントは読まないといけないけれども、それを除けば英語がなくても仕事はできると思っていました。
でも、使えるようになったら、全然違います。海外のカンファレンスなどで話して、たくさんの方と知り合いになれますし、仕事上でもたくさんメリットがありますね。直接顔を合わせてパーソナリティも含めて知っていると、何かメーリングリストなどでやり取りをしている時でも「この人がこう言ってるなら信用できる」というようなこともありますし。
― そこにやっぱり楽しさもありますか?
ありますね。色々な動きが見えてきますし。Ploneの世界を引っ張っているのはヨーロッパ、アメリカですから、英語が使えると最先端の情報を得られます。
ブラジルのカンファレンスに参加したときに、途中からポルトガル語になってしまって、そうした状況は日本に似ているな、と感じました。現地には英語ができる人が少ししかいなくて。今年の台湾のカンファレンスでも同じでしたが、そんな風にポルトガル語とか中国語とか、現地の言語で話されると、それが分からない外国人は置いてきぼりになってしまうじゃないですか。そういう意味で、共通語として皆が英語ができると助かるんだな、と思いました。
― そういう経験をされると、海外の方が日本の会議にいらっしゃって、日本語で話されてしまった時の気持ちがわかりますね。
よくわかりますね。それもあって去年あたりは頑張れたんじゃないかなと思いました。今年は日本でもカンファレンスをやるので、また英語を中心に使っていきたいですね。
― カンファレンスなどを経験して、もう英語を話すこと自体には慣れてきましたか?
海外へ行くことは2010年頃には慣れていましたね。旅行英語はパターンも決まっていて簡単ですので。ただ人と会話をすることは難しかったです。短いフレーズをパッと言われた時なんかは聞き取るのが大変で、ニコニコしてごまかしたりしていました。でもそれは駄目だなと思って聞き直すようにして、そしたら余計に分からなくなって(笑)
― でも分からないときはきちんと聞き直した方が良いですよね。私も以前は聞き取れるフリをしてしまって、英語ができると思われて会話がどんどん速くなっていって焦ったことがありました。聞き取りの力も上がってきましたか?
人によって、という部分はありますけれど、慣れてきたと思います。2013年くらいからようやく会話になるようになってきて。ブラジルには一人で行って、日本語を使えない「全部英語」の環境でも何とかなりました。
― 今は寺田さんが英語を実際に話す機会というのは、カンファレンスの時と週一回の英会話レッスンの時でしょうか?
そうですね。ただ去年は発表以外でもけっこう海外に行きました。シンガポールのPyConとか、11月にボストンでのミ―ティングに呼ばれて出席したりとか。例年は年に2回位のペースで海外に行く機会があるのですが、去年は4回くらいでしたね。
― 英語を使わない期間があると、次の機会に英語が話しづらくなったりはしませんか?久しぶりに英語を聞くと、理解が遅くなったりとか、言いたいことがスムーズに出てこなかったりとか。
確かに、去年定期的に海外に行っていた時は少し英語が聞き取りやすくなっていたかもしれません。
― いつも英語のプレゼンの準備はどのように行っていますか?
今は事前に原稿準備をして、英語の先生にチェックしてもらってアドバイスをいただいています。あとは近い業界にいる仲の良い友達に、資料や発表を見てもらって、内容的なものと話し方の両方について意見をもらっています。「もっとこうしたほうが内容は伝わりやすい」といったふうに。昔よりもプレゼンに向けてしっかり準備していますね。
― 人からの客観的なアドバイスやフィードバックというのは本当に大事ですね。英語に限らないとは思いますが。それでは最後に、「英語プレゼンに挑戦してみたいけどちょっと恐い」という方々や、「英語を使って仕事ができるようになりたい」という方々に向けて、一言アドバイスを頂けますか?
海外のカンファレンスとか、自分の興味のあるものにはぜひ行って欲しいと思います。そういうところから必要に迫られて英語を学び始めるのはとても効果的です。
特にこういう業界は流れも速くて、その分色々な情報が早く入るようになるので楽しく勉強できるようになります。そういう意味でも、英語の世界に飛び込んでみるのはオススメです。
またカンファレンスなどに行ったり、そこで発表をしたりすると、英語が上手い下手関係なく、色々な人に声をかけてもらえます。そうやってうまく機会を作った方が新しい発見もあるし、情報交換もできます。
実は日本の情報や日本語について知りたい海外の方は多くて、そういうところでスムーズな情報交換ができるようになることは楽しいし、仕事上のメリットもたくさんあります。それはコンピュータープログラムの業界でも、その他の業界でも共通することではないかと思います。
― 「とりあえず興味をもったら飛び込んでみる!」ということですね。そうやって、英語を使う楽しさや、ビジネスを通した人とのつながりが生まれていくのは素敵なことだと思います。今日はたくさんの参考になるお話、ありがとうございました!!