グローバル人材に聞く!梶山隆輔さん「英語を使って働くということ」前編
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最終更新日:2014/06/09
こんにちは。英語学習コーチのタニケイです!
英語を学んでいる皆さんの中には、既にお仕事で英語を使われている方も、「いつか使えるようになりたい」と思いながら学んでいる方もいらっしゃるかと思います。
そんな皆さんの参考になるように、実際にグローバルな環境で英語を使って仕事をしている方々に、どのようにしてビジネスレベルの英語を使えるようになったのか、また今仕事で英語を使ううえで、どんなことに気をつけているのか、どんな課題があるのか、などを伺っていきます。
先日、日本オラクルで、MySQLというデータベースのアジア・パシフィック地域のセールスコンサルティングのマネジメントをされている梶山隆輔さんに、インタビューをさせていただきましたので、そのレポートを2回に分けてお届けします!
梶山隆輔さんのインタビューレポート
高校時代カナダに留学するも…
― まずは学生時代のことから伺いたいと思います。高校時代、カナダに1年間留学に行かれたということですが、これはご自身で希望して行かれたんですか?
実は、そういうわけではないんです。私の通っていた横浜の山手学院には高校独自の交換留学プログラムがありました。私自身は当時英語も苦手で、それほど積極的にというわけではなく、なんとなく流れで留学に行くことになった感じでした。
高校に海外からの留学生はいたものの、留学生専用クラスとは完全に分けられていて留学生とはほとんど接する機会もなく、英語学習に特に力を入れている高校というわけでもありませんでしたが、留学は1年間に北米に10人前後、オーストラリアとニュージーランドに10人前後派遣していました。学校のプログラムとはいえ、当時は単位が認められず、休学のような扱いになって、同じ学年に戻ってくるというもので、希望者が留学していました。私は3年の夏に行きました。
― 実際に留学に行ってみてどうでしたか?
留学した町が、全く日本人のいない環境でした。カナダのアルバータ州のシルバンレイクという町にホストの家があり、学校も、人口が5,000人ほどの町にありました。
私が通った学校は、日本人が全くいないどころか、比較的新しい学校で、そもそも留学生の受け入れにも慣れていなかったのです。もちろん英語を話すしかない環境でしたが、当時英語は苦手で全く喋れない、という状態だったので、当初は本当に大変でした。
― そうすると、自分の知っている言葉やジェスチャーでなんとか伝える、という状態でしたか?
そうですね。どうしても意思疎通をしなければならないケースはいっぱいあったので、「どうにかして自分の意志を伝えようとする」ということが身に付いたと思います。躊躇したり恥ずかしがって引っ込んだりしてもどうしようもないので、開き直れるようになりました。それでも半年くらいはほとんど上手くコミュニケーションをとることができなかったです。初めの頃はホストファミリーの方とも必要最低限しか話さない、という感じでした。
ただ幸運だったのは、ホストファミリーがものすごくよく喋る方で、こちらがわからなくてもどんどん話してくれたんです。ホストファミリーは、子供はもう成人して家を出ていて、家の中には年配のご夫婦と私一人でした。そのせいもあってか、彼らはコミュニケーションを取るとき、一番伝わりやすいように、意図的に子供扱いをして、細かく丁寧に教えてくれましたし、言葉もシンプルな言葉を使ってくれました。
子供に何かを伝えるときと、外国人に何かを伝えるとき、伝え方は似ていると思うんです。どちらも、相手のバックグランドや前提知識が違って、こちらは当たり前だと思っていても、向こうは「そんなの知らないよ」ということが山ほどありますよね。そういう意識を持っていると、英語であるなしにかかわらず、ビジネスなど‘全員バックグラウンドが違う、前提がない’という場でコミュニケーションを取るのにも役に立つと思います。
― そうですね。英語を話すときだけではなく、それは大事なことですよね。
留学時代に英語力を伸ばした方法
― 留学した英語漬けの1年間で、英語力はかなり伸びましたか?
私の感覚では、英語を聞く、話すというのは伸びたとは思います。英語を読むスピードも上がりました。ホストファミリーのところには子供がおらず、家はとにかく町外れで農場の真ん中にある自分の家から家のポストまで1.5キロ、水を買うにも8キロ、学校も20キロ離れているという状態でした。ホストファミリーは学校の職員で、友達とふれあう時間も短い、という環境に置かれていたので、年齢の近い人とふれあうというよりは若干引きこもりのようにならざるをえず、よくテレビや映画を観ていました。
映画を観て流れをつかんだ状態で、その映画の小説版を読んでみる、ということも留学期間の最後3ヶ月くらいに繰り返しやっていました。1冊読むのに2、3週間かかるので、読んだのは10冊弱だったと思います。映画で観て筋がわかっているものを読むので、これは読むスピードを上げるのに効果がありました。読みながら辞書を引くと終わらないので、分からない単語は辞書を使わずに意味を予想して読んでいました。
このように当時から実践的な英語ばかりやっていました。辞書を引かずに読むのでわからない単語は分かるようにはならず、自分の分かる言葉で話すので文法的には正しくない英語を話していたことも多かったと思います。ですので、帰国後、学校の英語の成績にはほとんど反映されませんでした……。
― カナダでの学校の授業はどんな感じでしたか?
現地の中3の「英語」のクラスに入れられたのですが、全くわかりませんでした。宿題で出された薄い冊子の英文ですら、日本の大学受験の超難関校で出題される英語長文読解問題の数倍の長さで、全くついていけず、始めてすぐに落ちこぼれてしまいました。ついて行けないまま前期の授業が終わってしまい、後期は全く英語の授業を取りませんでした。
英語に触れたのは、学校の授業で、というよりは、ホストファミリーとのコミュニケーションや、映画を観たり小説を読んだりということがメインでした。
― では、帰国後の大学受験や、就職活動などで、何か留学したときの経験は生きましたか?
大学は理学部化学科を受験したので、試験科目に英語もあったものの、英語は重要科目ではありませんでした。留学したからどうということは一切なく、その時点ではあまり役に立たなかったですね。大学でも英語は一般教養でやったかな?というくらいで、ほとんど触れることはありませんでした。
就職活動の時も、当時TOEICは受けていなくて、たしか英検2級だけ持っていたのですが、日本の英語のテストが苦手だったこともあって、特に英語が自分のアピールポイントとなることはありませんでした。「英語を使った仕事をしたい」と思っていたわけでもありませんでした。
入社後、急に英語が必要に
― 2001年に野村総合研究所に入社して、2008年にMySQLに転職されたということですが、まず、野村総合研究所時代のお仕事と英語との関わりを教えていただけますか?
最初2年くらいは英語と全く関係ないシステムコンサルタント業務をやっていました。2003年頃、イスラエルの製品の技術調査をしていたチームで、相手の会社と電話会議をする機会があったのですが、そのチームに英語が得意な人がおらず、ただ留学経験がある、という理由だけで、私にその電話会議に出てくれ、という話が回って来てしまいました。
― それまで全然担当じゃなかったのに、突然電話会議だけ出る事になったんですか?
そうなんです。今思えば、よくなんとかなったな、という感じです。イスラエルの方もネイティブではないというのもあってどうにかなったのかもしれません。その時はなんとか相手の協力を約束してもらって、目的は果たせました。
これをきっかけに、他にも海外企業の調査や協業などの案件が出てきたときに、前回もやっているから、という理由でかり出されるようになりました。そして、いつの間にかそうした海外企業との交渉などを行う担当になりました。
でも、当時は、とりあえず意思疎通だけはできる、というレベルだったと思います。
― 会議などで使う英語は技術的な用語などがたくさんあったと思うのですが、その辺りはご自分で勉強されたのですか?
技術的な用語は日本でも同じ用語を使うことが多いので、あまり引っかかりませんでした。どちらかというと、会社ごとに事情が異なることによるビジネス的な大変さのほうが大きかったですね。お互い理解ができず、すりあわない、という難しさがありました。
― 「とりあえず意思疎通はできるというレベル」とのことでしたが、「英語がもう少しできていたら」、と思うような苦労はありましたか?
通じることは通じていましたが、もしかするとニュアンスや言い方などの面で失礼なことを言っていたかもしれません。
たとえば、もう一人英語が全然得意ではない後輩と一緒に仕事をしていて、「条件が合わないから良い条件を出してください」ということを後輩は書いたつもりだったのに、「もしご縁があったらまた一緒に仕事しましょうね」という意味に取られてしまったことがありました。
また、英語というよりは、文化的な背景の違いをお互いに認識しておらず、話が噛み合わない苦労のほうが多かった気がします。
大学での英語も「一般教養の単位が取れればいい」という感じでしたので、もしかすると今でも正しい英語は使えていないのかもしれません。ただ、シンプルな英語でも絶対に通じるはずなので、なるべくシンプルな言葉で言い換えるようにしています。
特に英語ネイティブではない相手と英語で話すときは、要注意ですね。インドやインドネシアといった英語圏に住んでいる人ですら、ルーツが違うと話す英語が全然違います。なるべく難しい単語や「お洒落な慣用句」を使わないように気を付けています。
― なるほど~!同じ英語を使うとしても、相手が誰かによって、気をつける点が違うんですね。
~後編につづく~
タニケイ