現役通訳案内士に聞く!実際のガイドのお仕事とは
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最終更新日:2016/06/17
<追記>以下に紹介している通訳案内士試験の情報は2014年度の情報です。通訳案内士試験の最新情報は、2016年6月に出版した『通訳案内士のすべてがわかる本』をお読みください☆また、このブログに掲載した通訳案内士インタビューをはじめ、ガイドとしてのさまざまな活動の仕方も紹介しています!
こんにちは。英語学習コーチのタニケイです!
外国人観光客の増加、そして2020年東京オリンピック開催を控えて、いま注目を集めている「通訳案内士」。この資格を持っていると、「有償で外国人観光客向けのガイド」をすることができます。
今年2014年度から、通訳案内士の1次試験(筆記試験)の英語の免除基準にTOEICとTOEIC SWのスコアが追加されたことで、これを機に受けてみようと思っている方も多いのではないでしょうか。私も実は今年受験予定です。
そして、いよいよ今日から、2014年度通訳案内士試験の願書受付がスタートしました。受付は6月いっぱいです。受験を考えている方は申し込み忘れにご注意!免除科目がなければ電子出願も可能です。
<試験日程>
願書受付期間:2014年5月19日(月)〜6月30日(月)
筆記試験:2014年8月24日(日)
筆記試験合格発表:2014年11月13日(木) (予定)
口述試験:2014年12月7日(日)
合格発表:2015年2月5日(木) (予定)
なんと、今年度の試験より、受験料が大幅値上げとなりました。
昨年までの8,700円 → 11,700円!!
(2か国語受験の場合は23,400円)
うぅ…高い。でも仕方ないですね。
さて、願書受付も始まり、いよいよ本気モードで勉強をしよう、という方も多いかと思いますが、一方で、興味はあるけど受けるか迷っている、という方も多そうです。
通訳案内士の資格がとれたら、実際にどんな仕事ができるんだろう?って知りたいですよね。はい。私も知りたいです。
そこで!
現役の通訳案内士の方にインタビューをさせていただきました!
お一人目は、2011年に通訳案内士の試験に合格されて、現在、他のお仕事と兼業で通訳案内のお仕事をされている太田さん(60代男性・仮名)です。試験準備の方法もお聞きしましたので、これから受けようとしている方、受験を迷っている方とも、ぜひ参考にしてください。
現役通訳案内士に聞く!試験準備と実際のガイドのお仕事
タニケイ:太田さん、よろしくお願い致します!他のお仕事と兼業で通訳案内のお仕事をされているとのことですが、どのような形で兼業をされているのですか?
太田さん:都立の学校を定年退職してから、今は非常勤で週2回、英語の教員をしています。通訳案内士の仕事は、その合間に時々引き受けています。
タニケイ:通訳案内士の資格を取ろうと思われたきっかけを教えてください。
太田さん:実は教員になる前に、行政の公務員として福祉関係の仕事をしていました。いつも異文化や国際交流に興味があったのですが、大学のときにもそういう勉強ができず、何か充足感がなかったので、そういうことに接することができないかと探していました。その一つの方法として、外国語ができるようになりたい、ということで、役所に勤めながら、夜間、英文科に通いました。
そして、30歳を過ぎてから教員試験を受けて教員になり、希望して都内の学校で教え始めました。その後も、異文化や国際交流への興味というのがずっと残っていて、何かそういうことに関われることがないかなーと思っていました。50年代半ばになってから、通訳案内士という資格を取ることを意識し始めました。
タニケイ:合格まで、どのくらい勉強されましたか?
太田さん:在職中の50代後半から勉強を始めて、約5年で受かりました。合格したのは、退職した後です。退職後すぐには再雇用のシステムを使わず、しばらくは、通訳案内士の予備校に通学したりして、勉強に集中しました。
タニケイ:5回受けられたとのことですが、その間、一部の科目だけ合格したり、一次試験のみ合格したり、ということはありましたか?
太田さん:ありました。一次試験に受かって、二次試験までは2回行きました。科目合格による試験免除は翌年しか有効ではないので、5回目に受けたときには振り出しに戻って全科目受けましたが、結果、最後まで受かりました。
タニケイ:勉強はどのようにされていましたか?
太田さん:私は色々活用しました。ハロー通訳アカデミーで通信講座を受けて、富士通訳ガイドアカデミーでも社会の講座や模試を受けました。退職してからは、CEL英語ソリューションズの通学講座も通いました。
タニケイ:どんな講座が役に立ちましたか?
太田さん:どの講座も役に立ちましたが、CEL英語ソリューションズの二次試験対策で、ネイティブの先生を相手に練習したのは特に役立ちました。自分がどんな風に話せるか、実際に話してみないと分からないし、それに対してコメントをもらえることが、とても役立ちます。
ちなみに、CEL英語ソリューションズでは英検1級の講座も受けていて、通訳案内士合格より後に、英検1級にも合格しました。
タニケイ:通訳案内士試験に合格したときには、その前とは違って手応えを感じましたか?
太田さん:そうですね。やはり今考えてみると、最初に二次試験を受けたときには言葉が足りなかったと思います。ガイドとしてのホスピタリティがなかった。次の二回目は、とにかくできるだけ話そうと思って、間違ったことも言ったりしてしまいました。受からなかったのは当然でした。
受かった年は、試験官が表情が硬くて、反応が良くなかったので、ダメだったかな?とも思ったのですが、振り返ってみると、ある程度具体的には話せていました。
タニケイ:どんな問題が出たのですか?
太田さん:日本の大晦日はどんな風に過ごすか、とか、京都でどんなところがおすすめか、とか、そんな質問でした。大晦日については、除夜の鐘にまつわる108つの煩悩の話をしたり、年越しそばの話などもしました。
タニケイ:資格を取ってから、どのくらいで実際にガイドのお仕事を始められましたか?
太田さん:2年くらい経ってからです。
タニケイ:お仕事はどうやって見つけることが多いのですか?
太田さん:私は兼業の関係もあり、それほど長時間のものはできないので、単発の数時間のものを主に引き受けています。
今は「日本文化体験交流塾」という団体で研修を受けて、インターンをして、それから実際にガイドを行う、という流れが多いです。ここでは、色々な日本文化の体験ができるプログラムがあり、研修やインターンを経て、そのガイドをすることができます。
タニケイ:サイトを拝見しましたが、忍者体験、寿司作りなど、面白そうなプログラムがたくさんありますね。他にはどんなお仕事を担当されてきましたか?
太田さん:派遣会社経由で空港送迎をしたり、バスツアーを担当したこともあります。今年いっぱいで学校の非常勤を終える予定ですので、その後は、もう少しツアーガイドも増やしていきたいと思っています。
タニケイ:どういった国の方々がいらっしゃいましたか?
太田さん:色々な国の方が来られます。英語圏だけでなく、英語を話せる東南アジアの方々なども。私が担当したのは、アメリカ、イギリス、オーストラリア、フィリピン、マレーシア、シンガポールなどの方々ですね。
タニケイ:ガイドのやりがいをどんなところに感じますか?
太田さん:やはり、お客様が喜んでくれたり、言葉をかけてくれたりしたときにやりがいを感じます。
自分自身も日本の文化を知らなかったことを知ることができるので楽しいですね。日本の文化は世界の中でもユニークだと思うのです。そのユニークなところを見つけられることが面白い。
また、毎回違う人と出会って、人と人との生きた交流があることも、新鮮だし興味深いですね。
タニケイ:大変なことはありますか?
太田さん:会社勤めと違うので、保障された身分ではありません。また、急に仕事が入ることもよくあります。
タニケイ:ガイドをするうえで必要なことは何でしょう。
太田さん:まず「健康」である必要があります。体力も必要です。今は、定年退職した人も、60代以降も元気な人が多いですし、家庭に入った主婦の方も、短時間の仕事を選べば、できる仕事です。
個人でサイトを作って看板を掲げてやっている人もいます。自分次第で、とても面白くできる仕事だと思います。
タニケイ:実際に海外のお客様はどんなところに興味をもたれますか?また、どういう知識を持っていると、ガイドとして役立ちますか?
太田さん:たとえば皇居に行くと、天皇陛下の名前を聞かれたり、どこに住んでいるのか、と聞かれたりします。ちょっと日本人同士の会話では出てこないような、予想しない質問がくるときもあります。
築地でお寿司屋さんに行くと、魚の名前や、食べ方をよく聞かれますね。お酒や食べ物に対する興味がある人は多いです。
相撲部屋の朝稽古に行くと、相撲の独特の社会そのものに興味を持つ人が多いです。
タニケイ:自分が知らない場合というのはどうするんですか?
太田さん:知らない場合は後で調べたり、その場でスマホで調べることもあります。
タニケイ:お仕事が入ったとき、準備はどんな風にするのですか?
太田さん:ネットや本、塾で習ったことの復習などをして準備します。
でも、本を丸覚えするようなことをしているとダメですね。難しい言葉ではなく、簡単な言葉で、自分が理解して、話せるようにしたほうがよいと思います。
タニケイ:では最後に、通訳案内士という仕事に興味がある人や、現在資格を取るために勉強中の方に向けてメッセージをお願いします!
太田さん:通訳案内士というのは、色々な国の人と実際にふれあえる貴重な機会を持てる仕事です。そういう仕事は、そんなにないと思います。
通訳案内士をすることを通して、色々な国の人と交流できるだけでなく、日本について、自分自身の理解が深まってくる、とても興味深い仕事です。
また、働き方の面でも、色々な働き方ができるので、自分のライフスタイルに合わせて変えていくことができます。
試験については、私が受験していた頃は、英語は、読む力が主に試されていたので、日本の文化に関して英語で書いたものをたくさん使って勉強しました。日本の文化をどう英語で表現するかを学べるような教材を選ぶと良いと思います。
地理は、実際に旅をしているイメージで、興味を持って勉強するのがおすすめですね。日本史も、歴史的なスポットを旅しているイメージで。もちろん色々暗記しなければならないのですが、その土地を旅しているつもりでやると楽しめます。写真や絵がたくさん載っている教材を用意するのがおすすめです。
タニケイ:太田さん、ありがとうございました!
<太田さんが試験対策で使われた本>
・「旅に出たくなる地図 日本」(帝国書院)
・「なるほど知図帳 日本 知れば知るほどみえてくる」
(太田さんが使われたこのシリーズの最新版は以下の本です)
「なるほど知図帳 日本〈2014〉―ニュースのツボがすいすいわかる」(昭文社)
・「ビジュアルワイド図説日本史」(東京書籍)