『アイスランド最高裁判所、エルフの存在を認める』って本当?ニュースの原文を当たってみよう!
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最終更新日:2014/11/03
こんにちは。英語学習コーチのタニケイです!
今日、『アイスランド最高裁判所、エルフの存在を認める』というニュースを読んで、「ええ?本当?!」とビックリしました。
以下のニュースを出しているのは「ロシアの声」というサイト。
アイスランド最高裁判所、エルフの存在を認める
アイスランドの自然保護団体「ラワの仲間たち」が首都郊外のアイスランド大統領邸と首都レイキャビクを結ぶ自動車道の建設計画を封じ込めた。
同団体はアイスランド最高裁に提訴した。いわく、道路が建設されればそこに住んでいるエルフ(妖精)たちの数千年におよぶ文化が破壊される。選ばれた者にしか見えないものの、そこには彼らの建てた建物、あまつさえ教会もある。
裁判所は訴えを認めた。アイスランド大学が行った世論調査では、国民の62%がエルフの存在を信じているという。
エルフといえば妖精...。最高裁判所が妖精の存在を認めるなんて、アイスランドはそんな素敵な(?)国なのかしら、と思いつつ。
でも、日本語に訳されているニュースは、原文を確認してみないと本当かどうか分かりません。原文へのリンクがあれば飛んで確認するのですが、リンクはありませんでした。
そこで、"Iceland elf supreme court"のキーワードでgoogle検索してみました。"supreme court"は最高裁判所のことです。
検索で見つかったのは2013年12月の記事ばかりで、その時点では、そうした訴訟が起きているというだけで、判決はまだ出ていませんでした。判決が出たというニュースの原文は見つからず。
仕方ないので、2013年12月のいくつかの記事を詳しく読んでみました。
Elf lobby blocks Iceland road project (the guardian)
Iceland's hidden elves delay road projects (NBC News)
Iceland highway project halted over environment, elf concerns (the star.com WORLD)
この時期のニュースは他にも多数出てきましたが、どれもAP通信の記事を元にしているので、ほとんど同じ内容です。
そのうちの一つ、the guardianの記事によると、以下の通りでした。
"Elf advocates in Iceland have joined forces with environmentalists to urge authorities to abandon a highway project that they claim will disturb elf habitat, including an elf church.
The project has been halted until the supreme court of Iceland rules on a case brought by a group known as Friends of Lava, who cite both the environmental impact and the detrimental effect on elf culture of the road project."
(和訳 byタニケイ)
アイスランドのエルフの擁護者たちが、環境保護主義者たちと協力して、当局に、エルフの教会を含むエルフの居住地を(彼らによれば)乱すような高速道路の建設計画を破棄させようとがんばっています。この建設計画は、アイスランドの最高裁判所が、この訴訟の判決を出すまで中断されています。この訴訟は、"Friends of Lava"という名で知られる団体によって起こされたもので、この団体は、道路建設計画が環境に与える影響と、エルフ文化に対して害を与えるということの両方を述べています。
う〜ん...つまり、訴えた"Friends of Lava"は、「環境問題」と「エルフ文化」への影響を理由にしているということで、そもそも訴えた側も「エルフが住んでいるんだから、ここに道路を作るな」と言っているわけではなさそう。
判決が出されているわけでもなく、元の日本語ニュースにある「最高裁判所がエルフの存在を認めた」というのはどうも間違いのようです。
さらにこんな記述も。
Though many of the Friends of Lava are motivated primarily by environmental concerns, they see the elf issue as part of a wider concern for the history and culture of the very unique landscape.
(和訳 byタニケイ)
Friends of Lavaの多くは主に環境問題に関心があるのですが、彼らもエルフ問題は、このとてもユニークな土地の歴史や文化の面で、より広く関心を集める問題の一つと見ています。
日本語のニュースよりも、だいぶトーンが低めですね〜。
また、日本語のニュースには、「アイスランド大学が行った世論調査では、国民の62%がエルフの存在を信じているという。」とだけ書いてありましたが、これについても詳細の記述がありました。
examiner.comの記事によると、
Three percent of Icelanders say that they have had a personal encounter with an elf. Eight percent of Icelanders believe in elves without any hesitation, and 54 percent of Icelanders do not deny the existence of elves, according to a 2007 study conducted by the University of Iceland.
(和訳 byタニケイ)
2007年のアイスランド大学による調査では、アイスランド人の3%がエルフと出会ったことがある、8%が疑うことなくエルフの存在を信じている、そして54%はエルフの存在を否定はしていない。
"do not deny the existence of elves"
...だいぶ控えめな表現です...。
しかし!
MailOnineの記事では、
A survey conducted by the University of Iceland in 2007 found that some 62 per cent of the 1,000 respondents thought it was at least possible that elves exist.
(和訳 byタニケイ)
2007年のアイスランド大学による調査では、1000人の回答者のうち62%が、少なくともエルフが存在する可能性があると考えている。
とのこと。2007年にアイスランド大学が2回も同じような調査を行うとは思えないので、前のニュースに出てきたのと同じ調査だとして、1000人のうち3%の30人が、エルフに出会ったことがある、ということです。結構多いかも...。
また面白かったのが、この記述。
And it's not the first time issues about "Huldufolk," Icelandic for "hidden folk," have affected planning decisions.
They occur so often that the road and coastal administration has come up with a stock media response for elf inquiries, which states that "issues have been settled by delaying the construction project at a certain point while the elves living there have supposedly moved on."
(和訳 byタニケイ)
このように、Huldufolk(アイスランド語で「隠れた人々」=エルフのこと)が建設計画の決定に影響を及ぼすことは初めてではありません。こうしたことはとても頻繁に起こるのです。そこで、道路沿岸整備局は、エルフ問題についてメディアから質問が出たときの想定問答として、こんなものを思いつきました。「そこにお住まいのエルフたちが他へ移動されていると推定される間、建設計画を遅らせることにより、その問題は解決致しております。」
エルフ問題がそんなに頻繁に話題にのぼるなんて!そしてこの憎めない想定問答!アイスランド、やっぱり素敵な国です。
もっと調べてみると、エルフについて知りたい人のためにElf Schoolまであります(ほぼ毎週金曜日開催)。
Elf Schoolでは、39ユーロ(53USドル)で、3-4時間に渡り、エルフの専門家からエルフについてレクチャーを受けることができます。80ページ分のテキスト、コーヒー・紅茶、美味しいパン、パンケーキ、チョコレートビスケットなどのお菓子つき!そして、最後にはCertificate(=修了証)ももらえるそうです!
アイスランド、そして、Elf School、行ってみたいですね〜☆
ということで、ちょっとニュースの原文を確認するつもりが、かなり楽しんでしまいました!
面白そうな海外ニュースを見つけたら、日本語版で満足せずに原文に当たってみると、本当のニュースが分かりますし、和訳のニュアンスが正しいのかどうか、自分の感覚で確認することができますよ〜。
原文も一つではなく、いくつかのニュースに当たるのがおすすめです。メディアが違えば伝え方も違う、ということがありますし、少しずつ違う情報が載っていますので、色々な情報に触れられるのもとても面白いです!!
そんなに英語ばっかり読むのは大変そうだな〜と思いますか?ポイントはやっぱり、「自分が興味が持てるニュース」でこれをやってみることです。興味があれば、辞書を引きながらでも意味を確認したくなりますから。
だまされたと思って、Let's try!!
タニケイ