「人の数だけ学びがある」ストリートアカデミー代表藤本崇さんインタビュー
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最終更新日:2014/01/09
こんにちは。英語学習コーチのタニケイです!
先日出版したこちらの本では、私が昨年9月に講師としてデビューした際の体験記や、「1週間で講師デビュー」するための具体的な方法をご紹介しています。
私が講師デビューするにあたって、とてもお世話になったのが、ストリートアカデミーです。というよりも、私が思い立ってすぐに「英語学習コーチ」として講師デビューできたのは、ストリートアカデミーの存在があったからこそでした。
「これを人に伝えたい」「教えて喜んでもらいたい」という想いがあっても、その具体的な方法が分からない方も多いのではないかと思います。私もそうでした。
そんな方はぜひ、ストリートアカデミーを見てみてください。
ストリートアカデミーは「学ぶ人」と「教える人」をつなぐサイトです。立ち上がったのは2012年夏。
以下、「ストリートアカデミーとは」のページより、そのミッションとメッセージをご紹介させていただきます。
誰しもが、何らかしら他人より秀でたスキルを持っています。各々が個人のスキルを周りにシェアする文化を育む事で、「身近な人から気軽に学べる社会を創る」それがストリートアカデミーのミッションです。
そこには専門学校もスクールも資格も、必要ありません。スキルの共有を通じて誰かが踏み出す新しいステップを応援する、そんな世界をみんなで創ってみませんか?
素敵なミッションですよね!
私は、自分がストリートアカデミーのおかげで新しいステップを踏み出すことができたので、今度は誰かのお手伝いができたら、と思い、この本を出してみました。講師になること、新しいチャレンジをすることに興味があったら、ぜひ読んでみてください!
この本を出すにあたって、ストリートアカデミー代表の藤本崇さんに、どうしてこのようなサービスを立ち上げようと思ったのか、などを、インタビューで伺いました。
ストリートアカデミー代表藤本崇さんインタビュー
ストリートアカデミー立ち上げのきっかけ
タニケイ:藤本さんはストリートアカデミーを、2012年8月に立ち上げられたということですが、どのようなきっかけ、そしてどのような思いで立ち上げたのですか?
藤本さん:きっかけは、実は妻のケーキ教室でした。結婚前、私は東京、妻は名古屋にいて、遠距離恋愛をしていました。妻は結婚前にル・コルドン・ブルーで資格をとっていて、ケーキ教室を始めようとしていましたが、結婚準備をしていたときに私がスタンフォード大学のMBAに合格してしまったので、急遽妻にもアメリカに来てもらいました。
MBAの倍率がとても高かったので、受からないだろうと思い、私が東京に来るつもりで結婚準備を進めていたのですが、意外にも受かってしまったのです。そして私は2年間学校に通い始めました。彼女は時間もあるので、英語を学ぶのと友達作りの目的で、大学の寮でケーキ教室を始めました。これが口コミで結構人気になりました。
当時、アメリカでは「肥満」という大きな社会問題がありました。オバマ政権になる前でまだ「健康的な食事をしよう」という意識がそれほどなかったときですね。妻の教えるお菓子は健康志向で、普通のロールケーキの生クリームの一部をサワークリームやヨーグルトで代替してローカロリーにするなどの工夫をしていたので、「美味しいし、ヘルシー!」と話題になりました。
大学のキャンパス内に夫婦寮があって、2005年当時、まだFacebookもなかったのですが、リアルFacebookのような状態でした。歩いているだけで誰かに会って、今日はこんなことをするよ、と会話を交わす、そういう環境でしたので、口コミが広まりやすかったんです。
妻は、そこでケーキ教室をしていて、ただ楽しいだけではなく、「健康的なケーキの教室」という手段で、肥満という問題も解消できるし、教えた人が子供と一緒にケーキ作りをすることで、家庭内のコミュニケーションも増やせる、まさに、「アメリカの社会的な問題を解消することに役立っている!」というやりがいも感じていたようです。
しかし残念ながら、2年で留学期間が終わり、日本に帰ることになってしまいました。日本に帰ってきてから、またケーキ教室を開こうとしましたが、なかなか集客ができなくて、難しかったのです。妻は当時FacebookなどのSNSもやっていなくて、最初はちらしを作って集客しようとしたりしていましたが、やはり、東京の真ん中でケーキ教室をやろうとすると、競争が激しくて大変だったんですね。
英語とケーキを同時に学べる親子向けの教室や、オーガニックを追求して砂糖を全く使わないケーキの教室などもやっていて、そういう講座を受けたい人は探せば必ずいると思うのですが、うまく集客ができない状態でした。
それを見ていて、こういう「伝えたいものがあっても集客導線がない」という人は世の中にたくさんいるのでは?と思ったのです。しかも、教える対象は、月に100人というような大規模でなくて、4〜5人でも良い、という人たちです。それで収入を得るというより、ただ「人に教えたい、伝えたい、他人に何かを伝えたい」という思いがあって教えたがっている人は多いのでは、と思いました。
そこで、スマホで取れるアンケートを使って、データを取ってみたら、20代、30代では3人に1人が、「人に何かを教えたい」または「教えた方がいいと人に言われたことがある」という、「教える人」になれそうな人たちでした。
現状を見てみると、習い事やおけいこの市場を占めているのは、ほとんどが大手の学校です。そういうところには、入会金や月謝があります。無料の体験講座があるようなところもありますが、学ぶ方の意識からすると、こういうところに足を踏み入れるのは少し恐いんですね。それで学ばない、という人も多いと思います。
習い事やおけいこの市場は大きいけれども、潜在的な学びの需要はもっと大きいのでは?もし「学校に入らされる恐さ」のようなものがなくなれば、もっと多くの人が学ぶようになるのでは?と思いました。しかも、もっとたくさんの人が教えられて、教わるほうも「都度参加する」ということができれば、学びのバラエティも増えます。
そこで、教えたい人と学びたい人をつなぐサービスを考え始めました。
ストリートアカデミーのこだわり
タニケイ:なるほど。藤本さんのとても身近なところでの実体験が、ストリートアカデミー立ち上げのきっかけになったんですね。
藤本さん:そうですね。実は私自身は教えた経験はなく、むしろ学ぶほうが大好きなんです。大学院も2回行きましたし、料理学校や映画学校などにも行きました。でも何かを学ぼうとすると、「学校に入る」という形でコミットを求められて、お金もかなり払うことになります。
日本の文化として、個人が新しいことにチャレンジしにくい、新しいことを始めることをそれほど応援されない、変化に対する風当たりが強い、ということがあって、それが学びの選択肢を狭めてしまっているのではないかと思います。
ストリートアカデミーの形は、教えたい人が教えられる、そして学ぶ側にとっては学びの選択肢が増える、そういう二面性があります。
「教える」側については、本業は別のことをやっている人でも、他の人に教えられることがある、という人はたくさんいると思います。教える人は、そんなにすごい人である必要はないのです。
日本人は慎重な人が多くて、教えるとしたら、まずは資格をとらなければいけない、と思ってしまいがちですが、教えることが好きな人が、ただ教えるだけで評価される、そういう形があって良いと思うのです。
タニケイ:本当にそうですね。人に伝えたいものがある人が、どんどん教えられる社会になると良いと思います。今後、ストリートアカデミーにはどんな講座を増やしていきたいですか?
一つは、WEB系、IT系は学びのニーズが高くて、教えられるスキルのある人も多いはずなのに、わりと独学で身につける人が多くて、初心者向けに教える人が少ないので、増やしたいですね。
たとえば、初心者向けの「アプリを作ってみよう」という講座とか、「Facebookでマーケティングをしてみよう」とか、「ブログの書き方」とか。ホームページの作り方、ソーシャルメディアの使い方などのWEB系のリテラシーは、今は誰でも持っておいたほうがいいと思います。
あとは、スポーツ系の講座も増やしたいですね。たとえばダンスとか、サーフィンなどのマリンスポーツとか。カポエラを公園でやる、とかもいいですね。
また、個性を生かした講座、個人の魅力で、エッジの効いた講座をぜひ作って頂きたいです。たとえば面白い場所でやるとか、何かと組み合わせるとか、新たな手法を取り入れて欲しいです。まずは講座を作ってみて、受講したい人がいるか反応を見てみる、ということも簡単にできますから、ぜひ色々面白いものを企画してみてください。
タニケイ:今順調にストアカの知名度も上がってきているように思いますが、どんな工夫をされているんですか?
藤本さん:まず、世界観を語るということを大事にしています。学校ではないので、サービスのクオリティについて安心感を与える、ということはできませんが、「身近な人から気軽に学べる社会を創る」というミッション、「スキルを共有しやすい社会にしたい」というヴィジョンに共感してくれる方を増やしていきたいと思っています。
そして、講座を開いている先生たちに「エバンジェリスト」(=伝える人)になっていただけるように、先生たちから情報が広がっていくような仕組みを色々考えています。
たとえば、FacebookやTwitterでストアカの情報をシェアしやすくする。感想がついたことを先生にお知らせする。先生にプラチナ、ゴールド、シルバーなどのバッチを付与して楽しんでもらう。先生たちの交流会を隔月くらいで開催するなど。そうしたことで、「ストアカで教えると楽しい」と先生たちに思ってもらえると、先生たちもそれを周りの方たちに共有してくれます。
タニケイ:そうですね。私もゴールドのメダルを頂いてすごく嬉しかったので、Twitterなどで自慢しました(笑)
ストリートアカデミーの今後の展開
タニケイ:今後はストアカをどのように展開していく予定ですか?
藤本さん:東京版だけでなく、全国の様々な地域に展開していきます。2013年11月に全国地域版を準備したところです。各地域で300人、12講座登録されたら、その地域のバージョンをフルオープンしていきます。最初にフルオープンしたのは神奈川です。他に盛り上がってきている地域は千葉、埼玉、愛知、大阪、北海道、福岡、広島、京都ですね。
全国で、草の根的に、ローカル地域で教えて学ぶコミュニティを作っていって欲しいと思っています。ストアカとしては、基盤整備の意味で、個人が教えるときの場所や機材など、助けになるようなパートナー企業との提携を進めています。
講師デビューしたい方へのメッセージ
タニケイ:では最後に、ストアカで講師デビューしてみたい方へのメッセージ・アドバイスをぜひお願いします。
藤本さん:はい。
教える内容は「何でもあり」です。
教えるスキルが何か、ということよりも、どれだけ楽しそうに、それを学んだらどんな世界が待っているかを伝えられるか、によって講座は成立します。また、そういうことを考えていると、自分も楽しくなります。
自分の個性を生かさない手はありません。ぜひ、人間性をうまく表現して、自分なりの企画を立てて、講座を作ってみてください。
なんとストアカには、包丁の研ぎ方の講座もあります。おそらく、これを受けようと思った人の中には、まず包丁の研ぎ方を学びたい、というよりは、この先生に会ってみたい、楽しそうだから受けてみたい、という方も多いと思います。
『砥石を使った簡単家庭包丁研ぎ研修』
http://www.street-academy.com/myclass/908
単にこのスキルを身につけたい、これを学びたい、というだけではなく、「この人に会ってみたい」と思わせたり、楽しくさせたりすることでも、学びは喚起できるのです。
仲間が欲しい方には、先生の交流イベントもありますし、教えてみたい人のためのワークショップも開催しています。こういう場所で、他の人の考え方を学んだり、成功している人のやり方を学んで、その要素を真似つつ、自分なりのストーリーを組み込むと良いですね。
『あなたの「おしえる」とは?』ワークショップ
http://www.street-academy.com/myclass/72
ストアカで講師デビューすることは、「小さな形の起業」のようなものだと思います。一番速くできる起業ですね。そこでは、講座内容を見た人に、サービス提供(=講座受講)する前に払いたいと思わせることができるか、がポイントです。ワクワク感を相手に感じてもらえるかどうか、です。
あとは、少し信用を持ってもらうために、プロフィールで自分の経歴を包み隠さずに表現するとか、個性をうまく表現することで、「この人に会ってみたい」と思ってもらえるようにするとか。
講座の紹介文も単に「こういうことをやります」ではなくて、そこにどんな思いが込められているか、が大事です。ぜひ、人の反応や声を聞いて、それに合わせてブラッシュアップしていってください。人気のある他の先生の講座の紹介文を見て、人が魅了される言葉、コミュニケーションとは何かを学んでみるのもおすすめです。
また、間口を広げるということも大事です。「初心者でもOK、初めてでも大丈夫」など、ぜひくどいくらいに書いてあげてください。初心者は思った以上に、講座を受けることに不安を感じるものです。さらに「こういう場合はこうしてください」などの注意点、受講者が不安に思うようなことがあれば、ぜひ網羅的に色々書いておくといいですね。信頼性が高まりますし、そういう思いやりのある先生はやはり人気があります。
私は「人の数だけ学びがある」と思っています。ストアカで講座を開くことは、「自分のペースで、どんな場所でも、自由に、あなただけの授業ができる」ということです。
ぜひ、あなたのコミュニケーション力と企画力を存分に使って、ユニークな場所でのユニークな講座を提案してください。
タニケイ:藤本さん、ありがとうございました!ストリートアカデミーがもっともっと全国に広がっていって、多くの人に知られて、身近な人から気軽に学べて、誰でもが教える人になれる世の中になったらいいな、と私も思います。これからも応援していますので、がんばってください!
インタビュー後記
いかがでしたでしょうか。
「人の数だけ学びがある」ということ。
私も好奇心旺盛な方なので、学ぶ方としても、気軽に色々な講座を受けてみることができるストリートアカデミーの存在は、素敵だな〜と思います!
力もバックグラウンドも持っていない個人でも、想いさえあれば何か行動することができる、そういう世の中にどんどんなっているのを感じます。
また、ストリートアカデミーの講座を見ていると、本当に色々な講師の人がいて、色々な講座があって、面白いです。まさに、個性やキャラクターで勝負できる場です。
「教える」ということに興味がある人はぜひ、サイトを見るだけではなくて、この本を参考に、本当に講師デビューしてしまいましょう!!
Enjoy Learning & Teaching☆
タニケイ