1-2.東京都23区は「特別」区

私は今、東京都渋谷区に住んでいます。
でも区ってよくわからない。たとえば私の名古屋の知人の住所は「名古屋市天白区」、横浜の知人の住所も「横浜市金沢区」ですし。
東京に来るまで、”区は市と一緒かなぁ”なんて漠然とイメージしていましたが、それだと名古屋市や横浜市のなかに更に市があるってこと?……混乱しますね。区にはどうも色々と複雑な事情があるようです。

そこで、まずは『渋谷区、新宿区といった東京都23区の「区」は名古屋市天白区や横浜市金沢区の「区」とどう違うの?』というテーマに焦点を当てて調べてみました。

「区」には2種類ある?

大都市地域では、一般の市町村とは異なる特例が地方自治法で定められています。
その中に、東京都23区の「特別区制度」と、名古屋市天白区や横浜市金沢区のように市の中に区を持つ「政令指定都市制度」の2つも含まれています。

新宿区、渋谷区などの東京都23区は「特別区」、名古屋市天白区や横浜市金沢区などの市(政令指定都市)の中にある区は「行政区」に分類されます。

実は、この2つ、同じ「区」という言葉を使っていて紛らわしいのですが、全然違うものなのです。

どう違う?特別区と行政区

次の表をご覧ください。

23区
(特別区)
政令指定都市の区
(行政区)
区役所 あり あり
区役所のトップ 区長 区長
区長の選び方 選挙 職員の中から任命される
区議会 あり なし(市議会)
条例の制定 できる できない
職員の採用 政令指定都市
学校 区立小中学校 なし(市立小中学校)
区の財産
(土地など)
あり なし
税金 特別区民税
軽自動車税
特別区たばこ税
鉱山税
入湯税
なし
(市が徴収)

どちらも区役所があり、区長がいるところまでは同じです。
でも、それ以外の部分では大きな違いがあることがわかりますね。

特別区では区長が区民の選挙で選ばれ、区議会があり、区議会が定める区の条例があります。また、区の職員の採用も基本的には区ごとに行っています。区立の小中学校があり、税金も特別区に納入されます。
また、区の保有地など、区の財産を持つことができます。

一方、行政区では区長は職員のなかから任命され、区議会はありません。条例、職員採用、学校、税金のいずれの点においても、行政区に決定権はなく、基本的には市(政令指定都市)の決定に従います。いわば、区は市の一機関です。そのため、区の保有地などの区の財産もありません。

そもそも、政令指定都市制度とは、国から認定を受けた市(政令指定都市)が、道府県から権限や財源の一部を委譲されたり、市の中に区を設けることができたり、というように、市(政令指定都市)がより高度な行政サービスの提供ができることをねらったものです。

たとえば、非常に人口も多い「名古屋市」全体として行政サービスを展開するよりも、西区、東区、天白区、名東区……などというように、細かい区切りにして、区ごとに行政サービスを展開した方が、より地域に密着したサービスが行えますよね。これが政令指定都市制度に基づく行政区の特徴です。

特別区は行政区とは異なり、それ自体が独立した市のような権限を持っていることがわかります。

それでは、特別区と一般の市には何か違いがあるのでしょうか?どうして「渋谷区」「新宿区」は「渋谷市」「新宿市」ではないのでしょうか?

これについては次回紹介しますね。

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