朗唱体験記Vol.1

朗唱体験記 Vol.1 (篠崎愛さん)

英語学校FORWARDのレシテーション(朗唱)コンテスト(2013年4月開催、スティーブ・ジョブズの2005年スタンフォード大学卒業式でのスピーチの一部)で優勝した篠崎愛さんに、どのように朗唱の練習をしたのか、また朗唱を通して感じたことなどを伺いました。

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今回のコンテストの範囲の内容、実は当初は理解できていませんでした。単語の意味はもちろん、語法や文法解釈に至るレベルではなかったのです。ですので、意味ではなく、聞こえてくる音だけを頼りに覚えていました。スローにしても聞き取れないときは、発音記号ごとに。

ジョブズが話せば1分間の内容を、抑揚などを書き留めるだけで1週間弱、覚えるのは1か月程度かかりました。苦労はしましたが、強く話している所はジョブズが大事にしたい所なのかな、伝えたいポイントなのかなと感じられると、なんだか嬉しくなりました。

そして今回の範囲は、職業柄(※)なのか…冒頭からすごく気になったのです。(※愛さんは医療関係者)

”I’m fine now.” ジョブズはご存知の通り、生を全うされました。ジョブズがこの言葉を発した時、それは本心だったのだろうか、それとも秘めた部分で何かを感じながら出た言葉だったのか。それが気になって彼の背景を調べました。

「いつ発症したのだろう?スピーチしたのはいつ?」いろんなことが分かってきました。そこから「どんな気持ちでこのスピーチをしたんだろうな」と感情について興味がでてきたんですね。もちろん、本心は経験した本人にしか分からない感情であり、たとえ似た経験をしていても、これはジョブズの感情であって、真似・コピーで近づけることしかできないことが分かりました。

それに気づかせてくれたのは、ある先生の一言でした。

”I had the surgery.”
先生:「それであなたはいつ手術したの?」

”I hope it’s the closest I get for a few more decades.” ”no one wants to die.”
先生:「あとどのくらい生きたいの?その間、何かしたいことはあるの?」

ジョブズの気持ちを想像することや、その気持ちから選ばれた単語や言葉を感じることはすごく奥深くて、大切にしたいなと思いました。でもそれと同じくらい、あるスピーチを自分の感情として表出するには、自分はどんなことが必要だろうと考えることも大切にしたいと思っています。

“I had the surgery. I’m fine now.”

たとえ同じ状況で、同じ手術を受けたとしても、手術を受けた日に「元気」と言える人もいれば、1年経っても心配で元気とは発せない人もいるかもしれないのです。『私の場合はどうだろう』『自分の持つ感情から、何をどんなふうに皆に伝えたいのだろう』と考えてみることがレシテーションには必要なのだ、と実感しました。
 
そして、誰かと一緒に練習することが私にとって一番大事なポイントでした。いろんな人のレシテーションを見させてもらいました。同じ文章をスピーチしているはずなのに、各々の味が出るのです。また、同じ人でも、コンテストの予選が近づくにつれて洗練されてくるので何度見ても面白くて感動するのです。「私も頑張ろう、楽しもう」と、良い影響を受けました。この過程があったからこそ、私は本番を心から楽しむことが出来ました。皆さんに支えられて決勝の場に立つことが出来ました。英語力に関わらずレシテーションは楽しめること、そして支えて下さった皆さんへの感謝の気持ちが伝わっていたら嬉しいです。
 
私はまだ英語力が低すぎて限られてはいますが、本当に理解している文章は自然と発することができます。一度言葉として発することができると、何度も使えるようになりました。ネイティブの素晴らしい人の文章を学んでいるので、実際の会話で引用できるフレーズが増えていくと素敵だなと思っています。

朗唱の楽しさや奥深さを教えて下さったFORWARDの先生方やスクール仲間の皆様に感謝しています。

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